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甲状腺機能低下症と卵巣機能

甲状腺ホルモンが少ないと卵胞が成長しないことがあります

 明らかに治療を要するような甲状腺機能低下症(顕性甲状腺機能低下症)があると、生理(月経)がなかなか来ないことがあります。一方で軽度の甲状腺機能低下があっても生理には影響を与えず、通常通りの生理がきていることも珍しくありません。また甲状腺機能低下症では黄体機能不全が高頻度に生じることも指摘されています。これらの事実からは甲状腺ホルモンは卵胞の成長や黄体機能のために必要なホルモンではあるけれども、ある程度のホルモンがあれば問題無いということが推測されます。実際に甲状腺ホルモンがどこまで卵胞の発育や黄体の機能に関与しているかはよくわかってはいません。しかし、甲状腺ホルモンが細胞や組織に作用を発揮するために必要な甲状腺ホルモンのレセプターがどこにあるのかはある程度わかっています。下に卵胞の成長や黄体化、胚の成長についての簡単な図を示しましたが、実際に甲状腺ホルモンのレセプターはこの全てに存在しています。

卵巣機能と甲状腺機能低下症

 おたまじゃくしに甲状腺ホルモンを与えると小さくてもカエルに変化します。逆に甲状腺ホルモンが作用しないといつまで経ってもカエルにならずに大きなおたまじゃくしになるという有名な現象があります。これらの現象や甲状腺ホルモンのレセプターが卵胞や卵・胚に存在することから考えると、卵が成長し妊娠に至るためには甲状腺ホルモンはたくさん無くてもよいが適量(あるいは最低限)は必須であるといえるのではないでしょうか。実際に甲状腺機能低下症のマウスでは卵胞の成長が妨げられ、甲状腺ホルモン投与で回復することが示されています。

視床下部、下垂体と卵巣ホルモン

 甲状腺ホルモンの低下による影響は、甲状腺ホルモンの卵胞や卵・胚に対する直接の働きだけではありません。甲状腺ホルモンが低下すると甲状腺ホルモンが足りないと判断した脳の視床下部というところがTRH(TSH放出ホルモン)という物質をたくさん下垂体に送ります。TRHは下垂体にTSH(甲状腺刺激ホルモン)を分泌させるためのホルモンです。TSHをたくさん出すことで甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを正常の範囲内にしようとします(この状態で甲状腺ホルモンが正常になれば潜在性甲状腺機能低下症、TSHをたくさん出しても甲状腺ホルモンが正常範囲にまで上昇しない場合を(顕性)甲状腺機能低下症と言います)。この時に増えたTRHが視床下部でのGnRHの分泌パターンや下垂体でのLHの反応性を変化させることでLHが低下し黄体機能が低下するとされています。(甲状腺も卵巣も出る物質は違いますがホルモンの体内におけるコントロール機序は似ています)

甲状腺機能低下症と高プロラクチン血症

 この時に増えたTRHの影響はGnRHに対してだけではありません。授乳の時に出るプロラクチンというホルモンにも影響を与えます。授乳している状況では妊娠しないようにという判断が体になされています。授乳中の母体への負担を減らすためかもしれませんし、次の妊娠のために子宮を休ませるためなのかもしれません。そのためプロラクチンには卵胞の成長を妨げるような働きがあります。TRHは甲状腺だけでなくプロラクチンの分泌も調整しているため、TRHが上昇するとプロラクチンが増え、その結果卵胞が成長せず排卵障害となります。高プロラクチン血症が軽度の場合は排卵は生じるけれどもその後の黄体の機能が不十分となり黄体機能不全となります。なお、高プロラクチン血症が卵巣機能に影響する理由としては、GnRHを低下させるためFSHやLHの分泌が低下することや、エストロゲンを視床下部で感知する力を鈍らせることでエストロゲンの上昇により起こるはずのLHサージの反応を生じにくくすることなどが言われており、GnRH分泌の低下に関してはキスペプチンという近年明らかにされた物質の関与も示唆されています。

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甲状腺機能低下症と生理(月経)

 甲状腺機能低下症があると報告によって差がありますが23-70%、甲状腺機能正常の女性の約3倍の頻度で生理不順が生じるとされ、生理の量なども含めた異常は80%におよぶという報告もあります。

1)甲状腺機能低下症と生理不順

 甲状腺機能低下症で生理不順となるのは、卵胞がしっかり成長しないことと、排卵がしっかりと行われない生理周期になることが主な原因です。 卵胞の成長が遅くなり排卵までにかかる日数が延びることで生理周期が長くなったり、ちゃんと排卵が行われないために破綻出血が増えることで生理の周期がバラバラになったりします。甲状腺機能低下の程度が高度になるほど、特にTSHの値が高くなるほど、生理不順になる頻度が増え生理不順がひどくなります。橋本病などで陽性となる抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体の有無は生理不順にはほとんど関連せず、あくまで甲状腺ホルモンがちゃんと出ているかどうかが生理不順の頻度や程度を左右します。

2)甲状腺機能低下症と生理の量

 甲状腺ホルモンは出血を止める力にも影響します。体の出血を止めるためには血液中にある細胞の一つ、血小板がよく知られていますが、止血のためにはそれだけではなく様々な出血を止めるための因子が存在しており凝固因子と呼ばれています。凝固因子は全部で12種類あります(I〜XIII、Ⅵが欠番)。 その中で凝固因子Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ、Ⅺは甲状腺ホルモンの状態に影響を受けます。甲状腺機能低下症になると上記の凝固因子の働き方が鈍るため出血が止まりづらくなり生理の量が多くなります。また甲状腺機能低下症になり卵胞の成長が妨げられると排卵が起こらないままの生理である破綻出血が多くなり、破綻出血消退出血に比べて出血が止まりづらくなるため生理の量が増えます。

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甲状腺機能低下症の妊娠に対する影響

1)甲状腺機能低下症が母体に与える影響

 顕性甲状腺機能低下症(明らかな甲状腺機能低下症でfT4やfT3が低い場合)は妊娠女性の0.3-0.5%にみられ、潜在性甲状腺機能低下症(fT3、fT4が正常でTSHが高い状態)は妊娠女性の3-5%にみられます。甲状腺機能低下症があると流産、早産、胎盤早期剥離、産後甲状腺炎の頻度が増えると考えられています(甲状腺機能低下症と不妊・流産参照)。ただし流産や早産に関しては甲状腺機能低下症とはほとんど関連がなく甲状腺抗体陽性(橋本病)と関連が深いとの考え方もあります。子癇前症や妊娠性高血圧(妊娠中毒症)、児の出生時体重の異常、周産期死亡率は甲状腺機能低下症で頻度が上がるという報告とそうでない報告があり、関連についてはよくわかっていません。妊娠糖尿病、前置胎盤、帝王切開術率などは甲状腺機能低下症でも頻度は増えません。

2)母体の甲状腺機能低下症が児に与える影響

母体の甲状腺ホルモンは胎児の成長に必要と考えられています

 以前、母体の甲状腺ホルモンは胎盤を通過しないため、甲状腺機能低下症は不妊症の原因にはなるが、妊娠すれば甲状腺機能低下症は特に胎児には影響しないと考えられていました。しかしその後、母体の甲状腺ホルモンはわずかですが胎盤を通過し胎児に行っていることがわかりました。そして妊娠の初期から中期にかけて母体の甲状腺ホルモンが低いと児の精神発育に影響する(IQが低くなる)という研究データが発表され、現在まだ確立した見解ではありませんが、母体の甲状腺ホルモンは胎児の発育(特に精神・知能・神経などの発達)に不可欠であると考えられています。なおIQの低下にし関しては甲状腺ホルモン補充の時期に違いがあるものの差はないとの報告もあり、未だ一定の見解が得られていません。他の先天奇形などは甲状腺機能低下症でリスクが高くなるということはありません。

 妊娠初期にはまだ胎児の甲状腺がほとんど発達していないので胎児自身から甲状腺ホルモンを産生することができません。しかしその妊娠初期にも胎児の脳には甲状腺ホルモンが存在することが動物実験で明らかになっています。したがって妊娠初期に胎児の体内に存在する甲状腺ホルモンは母体からの甲状腺ホルモンということになります。この母体からの甲状腺ホルモンが不足すると胎児の精神・神経の発達に影響する可能性が考えられています。まだ確立したものではありませんが、上述のごとく甲状腺機能低下症の母体から生まれた児のIQが軽度低下するという報告や、母が甲状腺機能低下症の場合、思春期後半での抗不安薬や抗精神病薬服用する人の頻度が上がるという報告、母体に甲状腺機能異常があると児がてんかんとなる確率が高くなるという報告などがあり、甲状腺機能低下症があると児の精神や神経の発達に影響する可能性を示唆するものと思われます。ただしほとんどの報告でその差は軽度であり、妊娠前あるいは妊娠中に甲状腺機能低下症に対する治療が行われている場合は影響がほとんどないという報告もあることから必要以上に気にしすぎる必要はないとも言えます。いずれにせよ児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも甲状腺機能低下症を甲状腺ホルモン薬の補充でしっかりとコントロールしておくのが無難と考えられます。

3)胎児・新生児の甲状腺機能低下症

 胎児の甲状腺が生まれながらに(先天的に)欠損してしまう病気があります。通常、妊娠8-10週頃から胎児が甲状腺ホルモンを産生できるようになります。しかし先天的に甲状腺が欠損し甲状腺ホルモンを産生できないと胎児の体内の甲状腺ホルモンが少ない状態になり胎児の精神・神経発達に影響する可能性があります。この場合も母体からの甲状腺ホルモンが胎児にいくことで精神・神経の発達への影響を最小限に食い止めることができると考えられています。母体から胎児へいく甲状腺ホルモンはわずかですが、このわずかな甲状腺ホルモンが精神・神経発達が遅れないようにしていると考えられます。胎児の脳にはT4からT3に変える酵素(脱ヨウ素酵素Type2)がたくさん存在しており、より甲状腺ホルモンとしての力が強いT3を多くすることで少ない甲状腺ホルモンを有効に作用させているものと考えられます。またこの脱ヨウ素酵素Type2はT4が低下すると酵素の活性が上昇し、胎児の脳だけでなく胎盤にも存在することで胎児が受ける母体の甲状腺機能低下症の影響を少しでも小さくなるようにしていると考えられます。ただし母体・胎児ともに甲状腺ホルモンの低下が高度だと胎児・新生児の精神・神経の発達が遅れ、骨の成熟なども遅れてしまう可能性が高まります。

4)甲状腺機能低下症と甲状腺ホルモン補充

妊娠すると甲状腺ホルモンの必要量が増えます

 もともと甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン補充療法(通常T4を内服)を行っている場合、妊娠すると必要なホルモン量が増えるので内服量を調整する必要があります。妊娠すると妊娠前に必要なホルモン量より20-50%増加します。これは胎盤で甲状腺ホルモンが分解されること、母体の甲状腺ホルモンが一部胎児へ移行すること、TBGが上昇することでフリーの甲状腺ホルモンを維持するために総甲状腺ホルモン量を増やさなければいけないことなどが関連しています。実際は1日の甲状腺ホルモン量を増やしたり、1日の量はそのままで週に2-3回倍の量を服用することなどで対応します(主治医と相談して自己判断で行わないようにしてください)。いずれにしても、妊娠初期あるいは妊娠前に甲状腺機能低下症がないかをしっかり確認し甲状腺機能低下症がある場合はしっかりと甲状腺ホルモン補充し、妊娠したら甲状腺ホルモンの補充量をしっかりと増やしておくことが重要になります。

 妊娠中の甲状腺ホルモン補充が甲状腺機能低下症に伴う様々な妊娠合併症や児へのリスクを防ぐ効果があるかどうかについては結論が出ていません。しかし少なくても流産と早産に関しては甲状腺ホルモンの補充でリスクを低くできると考えられており、その他の状態に関しても甲状腺ホルモン補充でリスクを減らせる可能性があります。甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充に関しては、児の頭蓋骨癒合の確率が増えるのではないかという報告が一つだけあるものの、一般的には児に対して安全な薬と考えられています。(私見ですが、適切な量の補充であれば甲状腺ホルモンによるマイナスの作用はほぼ無いため積極的に甲状腺ホルモン補充は行うべきと思われます)

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甲状腺機能低下症と不妊、流産

1)甲状腺機能低下症と不妊

 生殖年齢女性での甲状腺機能低下症の割合は2-4%。不妊症の患者さんではTSHの値が高い傾向にあります。TSHの基準を5.0mIU/Lとした時に不妊症の方たちの中でTSHが高い人の割合は4-5%くらいと報告されておりそれほど高いものではありませんが、不妊症でない人に比べるとTSHが高い人の割合は多いとされています。顕性甲状腺機能低下症(明らかな甲状腺機能低下症でfT4やfT3が低い場合)がある場合には排卵障害を原因とする不妊症になりやすくなり(甲状腺機能低下症では23%が排卵障害、甲状腺機能正常者では8%)、甲状腺機能の低下が高度なほどその頻度が高くなります。排卵障害がない場合の顕性甲状腺機能低下症や潜在性甲状腺機能低下症(fT3、fT4が正常でTSHが高い状態)では不妊症に影響するかどうかははっきりとはわかっていません。原因不明の不妊症の中には潜在性甲状腺機能低下症の方が多いとの報告もあります。

 甲状腺機能の最も信頼性の高い指標はTSH値であり(一部の甲状腺の病気を除く)、TSHが高ければ甲状腺機能が低く、TSHが低ければ甲状腺機能が高いという評価になります。妊娠率や流産率を考慮してTSHの基準をもっと厳しく変えるべきとの考えがあり近々基準が2.5mIU/L前後に変わる可能性があります(現在はほぼ5.0mIU/L以下が正常範囲です)。基準が変われば今よりも積極的に甲状腺補充が行われるようになると予想されます。しかし、比較的最近の研究ではTSHの値が2.5mIU/L以上でも未満でも妊娠率や流産率に違いはなく、基準を4.5mIU/Lとしても4.5以上か未満かでも妊娠率、流産率に差がないと報告されており、実際のところTSH値の基準を変える意味があるのか、さらには本当に軽度の甲状腺機能が不妊や流産に影響しているのかについてもまだはっきりとはわかっていないのが現状です。

 それぞれの項目について甲状腺機能低下症と不妊との関連の報告は下のとおりになります。

甲状腺機能低下症と受精率
TSHが高くなると受精率が低下する。
甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン補充を行っても甲状腺機能正常者に比べて受精率は低い。
潜在性甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン補充を行っても受精率は改善しないとの報告と受精卵数が増加するとの報告がある。
TSHレベルが受精率と反比例する(ただし近年の報告ではその関連性は確認できず)。
 
甲状腺機能低下症と着床率
甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン補充を行っても甲状腺機能正常者に比べて着床率は低い。
潜在性甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモン補充を行った方が着床率が上昇する。
甲状腺機能低下症と子宮内膜の厚さ
甲状腺機能低下症でも子宮内膜の厚さには差がない。
ただし動物実験では甲状腺機能低下症で子宮内膜が薄くなりやすく甲状腺ホルモン補充で回復すると報告されており、甲状腺機能低下症がある程度子宮内膜に影響している可能性はある。
甲状腺機能低下症と妊娠率
甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン補充を行っても甲状腺機能正常者より妊娠率は低い。
潜在性甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモン補充を行った方が妊娠率が上昇する。
TSHレベルは体外受精で妊娠するかの予測因子になり得る(近年の報告では関連性を確認できず)。
潜在性甲状腺機能低下症に甲状腺ホルモン補充を行っても妊娠率は改善しない。
卵巣刺激時の甲状腺ホルモン
卵巣刺激によりエストロゲンが上昇するとTBGの上昇により甲状腺機能は低下しやすくなるため 卵巣刺激中はTSHが上昇しfT4が低下する。
甲状腺抗体が陽性だとTSHが上昇しやすくfT4が低下しやすくなる。

 甲状腺機能低下症が不妊となるのは排卵障害の頻度が高まることが理由の一つです。排卵障害がない場合にはまだ関係するのかどうかもはっきりとはわかっていない状況ですが、受精率や着床率などが低下することで妊娠率が低下する可能性があります。また甲状腺機能が低下すると性ホルモン結合グロブリン(SHBG)とエストロゲン(卵胞ホルモン)やテストステロン(男性ホルモン)とが結合しづらくなりフリーのエストロゲン、テストステロンが増えます(甲状腺ホルモン同様、フリーのホルモンが効果を発揮します)。甲状腺機能低下症では高プロラクチン血症やGnRHの分泌異常を引き起こしたりします。このような環境が妊娠にマイナスになっている可能性があります。これらの異常は甲状腺ホルモンの補充により改善し、プロラクチンやGnRH分泌は正常化するとされています。しかし甲状腺ホルモンを補充したら妊娠率が上がるかというと、残念ながら今のところそういう報告は限られています。とはいえ、いくつかの報告では甲状腺ホルモン補充が効果があるといえるほどの差はついていなくても甲状腺ホルモンを補充したほうが妊娠率などが高い傾向にあり、甲状腺ホルモン補充は効果的かもしれません。また甲状腺機能の低下は受精率などよりもその後の胚の成長に影響を与えている可能性もあります。なお体外受精における採卵数や成熟卵数に関しては甲状腺ホルモンを補充しても差はなさそうです。

2)甲状腺機能低下症と流産

 甲状腺抗体の有無にかかわらずTSHが高いと流産率上昇し、TSHの値が2倍になる毎に流産率が60%ずつ上昇する(1.6倍になる)という報告があります。甲状腺ホルモンが胚の成長や黄体の機能に影響しているため、その機能の低下が流産に関与している可能性があります。また甲状腺ホルモンはNK細胞などの流産に影響するような免疫反応の調整因子となっているともされているため、そのような免疫の状態が流産につながっているのかもしれません。ただし、顕在性甲状腺機能低下症も潜在性甲状腺機能低下症も流産とは関係ないとする報告もあります。全体的にみると顕性甲状腺機能低下症も潜在性甲状腺機能低下症も流産の増加に関連していると考えて良さそうです。

 甲状腺ホルモン補充を行った場合に流産が少なくなるかどうかについては、甲状腺機能低下症の方に甲状腺ホルモン補充を行うと甲状腺機能が正常の方の流産率と変わらなくなるという報告や、潜在性甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモン補充により流産率が低下するという報告などがあります。効果が無いとする報告もあるものの甲状腺ホルモン補充により流産を減らせる可能性は高いと考えられます。また甲状腺抗体が陽性の場合には妊娠初期に甲状腺機能低下症になりやすく、それが流産率上昇の原因となっている可能性があります。また流産ではありませんが、TSH>2.5mIU/Lで早産傾向、出生体重減少傾向となります。流産に関しては一般的は潜在性甲状腺機能低下症の基準はTSH4.5-5.0mIU/L以上で、ほとんどの報告はその基準を用いていますが、なかにはTSHの正常値を2.0-2.5mIU/L以下とするべきという専門家もいます。なおTSH値の正常値を4.5mIU/L以下としても2.5mIU/L以下としても妊娠率や流産率は変わらないとの報告もあり、TSHの基準値がどの値がいいのかについては結論が出ていません。(ただしそのTSHの基準値によって妊娠率や流産率は変わらないとする報告は、TSHがどんな値でも妊娠率や流産率に影響しないというデータですので(潜在性)甲状腺機能低下症は妊娠率、流産率と関係ないという立場からの考えになります) 。なお、最近の報告では妊娠初期(妊娠12-13週まで)に甲状腺抗体陰性者に対してTSH>2.5mIU/L以上で甲状腺ホルモン補充を開始すると流産率を減らせるという報告があります。

3)甲状腺抗体(橋本病)と不妊

 甲状腺抗体(抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体)は妊娠可能年齢女性の8-14%にみられます。不妊症で甲状腺抗体の頻度には差がないとする報告もあれば、不妊症では甲状腺抗体保有率が高いという報告もあります。不妊症の中でも原因不明の不妊症の方では甲状腺抗体が4倍高いと報告されています。不妊症で問題となる抗体は主に抗TPO抗体であり、抗サイログロブリン抗体が不妊症と関連があるとする報告は限られています。また不妊症では65%の方に甲状腺抗体を含む何らかの免疫異常があるとされています。子宮内膜症があると甲状腺抗体を持っている頻度は3.5倍に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があると3倍になると言われ、早発卵巣不全の方のなかには甲状腺抗体陽性の方が多いとも言われています(子宮内膜症と甲状腺抗体は関連がないとする報告もあります)。これらの状況が妊娠率の低下や流産率の上昇に関連しているのかもしれません。またTPO抗体が高いとクロミフェン抵抗性やPCOS治療に対する反応性低下につながるとも言われており不妊症の方の治療にも影響を与えている可能性があります。

 甲状腺抗体が陽性の方での妊娠率の報告をみてみると、甲状腺ホルモンが正常なら甲状腺抗体が陽性でも陰性でも妊娠率に差がないとされています。体外受精においては、甲状腺抗体(TPO抗体)の有無による妊娠率には差がなく甲状腺ホルモン補充によっても妊娠率は改善しないとする報告がある一方で甲状腺抗体陽性の場合は受精率、着床率、妊娠率が低下するというデータもあり、一定の見解は得られていません。現状では甲状腺抗体は妊娠率にはほとんど関係しないと考えられています。ただし近年、特に体外受精において甲状腺抗体があると受精率や着床率、妊娠率が低下するのではないかとの考え方が徐々に増してきている印象があります。なお分娩率も甲状腺抗体の有無で差がないと考えられています。

4)甲状腺抗体(橋本病)と流産

 甲状腺抗体が陽性の方では流産率が上がるとする報告と関連がないとする報告と両者が混在しています。しかし多くの報告を総合してみると甲状腺抗体が陽性の方では甲状腺ホルモンが正常であっても約2倍流産率が高くなると考えて良さそうです(反復流産のリスクは約4倍)。これは自然妊娠(体外受精以外)であっても体外受精であってもほぼ同様の流産リスク(甲状腺抗体陰性者の約2倍)があります。流産に至った方では分娩まで至った方に比べて抗TPO抗体価も抗サイログロブリン抗体価も高いとされ、抗体がたくさん体内に存在するほど流産しやすくなる可能性があります。甲状腺抗体が陽性の場合、妊娠初期に甲状腺機能低下症になりやすく、それが流産率上昇の原因となっている可能性があります。実際に甲状腺ホルモン正常でも甲状腺抗体陽性の方に甲状腺ホルモン補充を行わないと妊娠中T4は30%低下しTSHは徐々に上昇し19%が潜在性甲状腺機能低下症になるとされています。また、甲状腺抗体陽性者では早産が増加し。甲状腺ホルモンの状態に関わらず甲状腺抗体が陽性かどうかが周産期死亡のリスク因子となるとも報告されています。

 甲状腺抗体が陽性だと流産が増えるとして、それを予防できるかどうかですが、甲状腺抗体陽性者に甲状腺ホルモン補充を行うと52-75%の流産減少効果があり、69%の早産減少効果があるという報告があります。 なかには甲状腺抗体(TPO抗体)陽性者に甲状腺ホルモン補充を行うことで流産率が甲状腺抗体陰性の方と差がなくなるというものもあり甲状腺ホルモン補充の効果はある程度期待できそうです。他の治療法として免疫グロブリンとヘパリンやアスピリンを組み合わせた治療の報告もありますが確立した治療ではなく甲状腺ホルモン補充の方が効果は高いとされているため一般的は行われていません。なお甲状腺ホルモンを補充しても妊娠性高血圧や胎盤早期剥離には効果はないとされています。

甲状腺抗体(橋本病)がなぜ流産に影響するか(仮説)

1.橋本病は自己免疫性疾患(リウマチなどのように自分で自分の体を攻撃する物質ができてしまう病気)なので、免疫のバランスが乱れて流産につながる。
2.妊娠によって甲状腺ホルモンの必要量が大幅に増加するが甲状腺抗体陽性者ではその変化についていけずに甲状腺ホルモンが足りなくなることで流産となる。
3.橋本病の女性は3-4歳妊娠年齢が高くなる傾向にあり、その年齢が高い分だけ流産の可能性が上がる。(近年、年齢の影響を受けないような調査方法でも流産率に差が出ているので最近はこの年齢的な理由だけではないとされています)
4.甲状腺抗体陽性はいまだはっきりとわかっていない自己抗体存在のマーカーになっている可能性があり、その抗体にはTSHレセプターの働きを邪魔する抗体があり、それがhCGとの交差反応をとおして黄体の機能を妨害してプロゲステロンやエストロゲンの産生を低下させることで流産増加につながる。(妊娠初期に出るヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)には黄体を刺激する働きがあり、TSHとhCGは構造が似ていてhCGには弱いTSH作用がTSHには弱いhCG作用があります)

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