貧血とは体のいろいろな組織に酸素を運ぶ赤血球が足りなくなる状態です。赤血球の中ではヘモグロビン(Hb)という鉄でできた部分が実際に酸素とくっつく働きを担っています。貧血は、血液中のHbの値が低いかどうかで判断します。
妊娠するとHbの数は増えますが、血液検査でのHbの検査値(Hbの濃度)は通常低下します。これは血液の量がHbの量よりも増加するため、薄まってしまうからです。妊娠中はHbが11g/dl以下になると貧血の診断になり、妊婦さんの5人に1人が貧血になります。貧血が高度になると胎児の成長に影響してくるため、早めに治療しておいた方が望ましいと思われます。
妊娠中の貧血の80-90%以上が鉄欠乏性貧血です。
1)鉄欠乏性貧血
- 原因:
妊娠していない時の女性は1日に鉄分を12mg以上摂取する必要があります。妊娠すると鉄分が1.5倍必要になります。しかし、鉄分を必要量摂取することは、けっこう大変です。また鉄分は体に吸収されづらいという特徴があります。したがって妊娠中は鉄分が不足しやすく鉄欠乏性貧血になりやすくなります。
- 診断:
血液検査で判断します。ヘモグロビンの値が低く、赤血球の大きさが小さくなり、かつ赤血球中のヘモグロビンが少なくなるのが特徴です(小球性低色素性貧血といいます)。体の中の鉄分や鉄を運ぶ物質なども測定して参考にします。
- 治療:
ごく軽度の貧血では、まず食事で鉄分をしっかりとるようにします。それ以外では鉄を薬として服用します。貧血が高度だったり、胃や腸の病気があって内服では鉄の吸収が期待できない時は鉄分の注射(静脈注射)を行います。
鉄が多く含まれるもの
レバー、ひじき、あさり、ほうれん草、わかさぎなど
注意:レバーにはビタミンAがたくさん含まれており、ビタミンAをとりすぎると胎児に影響する可能性があります(特に妊娠初期)。したがって、レバーの食べ過ぎには注意してください(時々、通常量食べる程度なら全く問題ありません)。 |
2)葉酸欠乏性貧血
- 原因:
細胞の中には核酸という生命活動を行ううえで非常に重要な物質が含まれています。葉酸はこの核酸を合成するのに必要なものでビタミンBの一種です。一般には不足しにくいものですが、食事などで十分に摂取しづらいので、妊娠などで必要量が多くなると欠乏しやすくなってしまいます。通常1日に0.2mg程度必要ですが、鉄と同様妊娠すると必要量が増え、0.4mg程度必要になります。
葉酸が欠乏すると、貧血を生じたり、口内炎や下痢となります。妊娠の初期に欠乏すると、胎児に神経系の奇形を生じる可能性が高くなります。てんかんなどの病気に対する薬の中には、葉酸欠乏になりやすい薬がありますので、このような薬を服用している時は妊娠初期から注意が必要です。
- 診断:
血液検査で判断します。通常、葉酸欠乏による貧血は赤血球が大きくなる貧血になります(大球性貧血)。しかし妊娠中は鉄欠乏性貧血(赤血球が小さくなる貧血)を合併していることが多く、必ずしも大球性貧血になるとは限りません。
- 治療:
葉酸を補充します。1日0.5−1mgの葉酸(フォリアミン)を服用します。予防的には薬(フォリアミン)やサプリメントで0.4mg(400μg)を服用します。妊娠予定の方は貧血の有無に関わらず、予防的に葉酸を摂取することも勧められます。
鉄欠乏性貧血を合併していることが多いので、鉄剤の服用も必要となることがほとんどです。
葉酸が多く含まれるもの
豆類(枝豆、大豆)、ほうれん草、乾燥わかめ、牛レバーなど
注意:レバーにはビタミンAがたくさん含まれており、ビタミンAをとりすぎると胎児に影響する可能性があります(特に妊娠初期)。したがって、レバーの食べ過ぎには注意してください(時々、通常量食べる程度なら全く問題ありません)。 |
3)その他の貧血
妊娠中は、鉄や葉酸の摂取不足で貧血になることがほとんどですが、稀に他の貧血が生じることもあります。
- 再生不良性貧血:
赤血球の他、白血球や血小板などの細胞を作っている骨髄の機能が低下する病気です。
- 溶血性貧血:
赤血球がたくさん壊されるために生じる貧血です。
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